慰謝料請求とは

因果関係及び損害について

1. 精神的苦痛との因果関係

不倫・不貞行為を理由とする慰謝料を請求するためには、不倫・不貞行為を行ったことにより、支払権利者である配偶者に、精神的苦痛(損害)が生じたということが必要です(民法709条)。

不倫・不貞行為を理由とする慰謝料請求を受けた場合にも、不倫・不貞行為を行ったことにより、支払権利者である配偶者に生じた精神的苦痛(損害)に対して、賠償する義務が支払義務者に発生することになります。

不倫・不貞行為による慰謝料請求において、不倫・不貞行為に伴って支払権利者である配偶者に生じたありとあらゆる精神的苦痛に対して、賠償がなされなければならないわけではありません。不倫・不貞行為と相当因果関係の範囲内において発生したと認められる精神的苦痛に対して、慰謝料の支払による賠償が行われる必要が発生します(民法709条)。
たとえば、夫である男性が家庭をかえりみないで交際女性と不貞行為を行った場合、夫の妻は交際女性に対し、慰謝料を請求することができます。他方で、夫と妻の間に未成年の子がいる場合、交際女性が意図的に妻の子に対する監護などを積極的に阻止するなどの事情がない限り、未成年の子(法定代理人・親権者である妻)は不倫・不貞行為を行った交際相手に対し、慰謝料請求を行うことはできません(最高裁昭和54年3月30日裁判集民126号423頁)。これは、夫と交際相手が不貞行為を行ったからといって、直ちに、夫と妻の間の子に精神的苦痛が発生するとは法的に評価することができず、不倫・不貞行為に伴う子の精神的苦痛と不倫・不貞行為との間に、相当因果関係がないと考えられるからです。

2. 弁護士費用

不倫・不貞行為による慰謝料を請求するために、業務を依頼する弁護士に弁護士費用を支払った場合には、その費用を有責配偶者(不倫・不貞をした配偶者)または不倫・不貞行為を行った交際相手に対して、請求することができる場合があります。
この金額は、実際に弁護士に支払った費用ではありません。裁判となった場合、判決により裁判所が認める慰謝料金額(請求認容額)の1割程度とされることが多いです。

3. 調査費用

不倫・不貞行為を突き止めるために、興信所、探偵・調査会社等(以下、「興信所等」といいます。)に調査を依頼した場合の調査費用を有責配偶者に請求する事ができる場合があります。
興信所等に調査を依頼することが、不倫・不貞行為を突き止める上で必要やむを得ない場合には、有責配偶者または不倫・不貞行為の交際相手に対して、請求することができると考えられます。興信所等に依頼した調査に要する調査金額が多額になる場合には、相当な金額の範囲内に限られるとされることがあります。

4.離婚慰謝料は不倫・不貞相手に原則請求できない

不倫・不貞行為によって、夫婦関係が破たんし、離婚に至るケースは少なくありません。
この場合、不倫・不貞された人は、配偶者に対して、不倫・不貞行為の慰謝料のほかに、離婚に伴う精神的苦痛の損害として、離婚慰謝料を請求することができます。
その上で、離婚慰謝料について、不倫・不貞行為の相手方(配偶者の不倫・不貞相手)に請求することができるかが問題になります。
この点について、最高裁判所の平成31年2月19日の判決は、「夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、・(中略)・特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」として、原則として不倫・不貞相手に対する離婚慰謝料請求を認めない判断をしました。「特段の事情」として例外的に認められるのは、「当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるとき」として、不倫・不貞相手が夫婦の離婚を意図し、不倫・不貞行為をしたような場合としました。
最高裁判所がこのような判断をした理由として、「離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である」と述べており、夫婦の問題は基本的に夫婦当事者間の問題である、という考え方があるようです。

以上から、不倫・不貞行為の相手方に離婚慰謝料を請求することは、原則できないということになります。
しかし、不倫・不貞行為者が、交際相手と再婚などするために、離婚させることを意図するような場合は、決して少なくないと思われますので、不倫・不貞相手に離婚慰謝料を請求することが全くできない、ともいえないように思われます。一方でこの点は、相手の内心の問題であるので、証拠を用意し、立証することは容易ではないという問題はあります。

いずれにしても、不倫・不貞行為の相手方に離婚慰謝料を請求することには一定のハードルが課せられており、不倫・不貞行為の相手方に離婚慰謝料を支払ってもらえる保証はないといえます。
したがって、不倫・不貞行為によって、夫婦関係が破たんし、離婚を強いられた方は、不倫・不貞行為によって発生した精神的苦痛に対し、不倫・不貞行為の当事者(不倫・不貞行為を行った配偶者と交際相手)から慰謝料の支払を受けることをより検討してみることが考えられます。

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